ご挨拶
昨年は、数年間続いたコロナ禍の影響が落ち着いて、日々の人と人との交わりの機会が以前のように戻ってきた一年でした。園での様々な行事もコロナ以前のようにのびのびとできるようになってきました。一方でコロナ禍の期間に身に着けた感染症への対応の知恵や習慣は、引き続き継続していきたいと思います。
児童養護施設仙台天使園では、現在45名の子どもたちが本園の5つのユニットと4つの地域小規模施設に分かれて生活しています。昨年度まで本園は6つのユニットでしたが、近年需要が多いショートステイ利用への対応も考え、一つのユニットをショートステイが必要な子どもたちのために用意することにしました。
1933年に聖ドミニコ女子修道会によって活動がはじめられた仙台天使園は、一昨年、設立90周年を迎えましたが、今もキリスト教のメッセージを創立の精神として大切にしています。価値観が多様化する現代社会の中で、すべての人が神の前で平等な兄弟姉妹であることを土台に、小さい者、弱い者、苦しむ者、悲しむ者へ温かい眼差しを向け、互いに仕えあい、奉仕をいとわない精神は、2000年前にイエスが見本を示してくれたもので、仙台天使園にも受け継がれているものです。この伝統をこれからも次世代へとつなげていきたいと思います。

近年、日本の社会では「DV」、「児童虐待」、「子どもの貧困」、「貧困の連鎖」などという言葉を頻繁に耳にするようになりました。毎週、全国で一人以上の「虐待死」も報告されているようです。これらのキーワードはいずれも児童養護施設の使命に関連する言葉です。今、様々な理由で家庭を離れ、施設で生活しなければならない児童をお預かりし、健全に成長していくことを助け、さらに将来の進路へつなげていけるよう力を尽くすことは、私たち施設職員にとって、世の中からの喫緊の要請に応える貴い仕事であると考えています。子どもたちは身近な大人からたくさんの影響を受けて育ちますので、職員一人ひとりが研鑽を惜しまず、心して日々励んでいきたいと思います。
昨年春の5名に続き、今年の春は7名の園児が高校を卒業し、園を巣立っていきました。一般に児童養護施設出身者は、18歳の自立に際し、どうしても支援が必要になります。通常ならこのような時に期待できる家族や親せきなどによるセイフティーネットが十分にないまま社会に出ていく卒園生が多いのが現状なのです。進学を希望する場合の学費や、住居費、生活費など金銭的な援助が保障されないと進路選択の幅も狭まりますし、初めての一人暮らしへの不安も大きいものです。園としてはアフターケアの職員を置き、卒園後3~4年間のサポート体制を敷いて援助ができるようにしていますが、経済的な援助のために、園独自の「自立支援金」も蓄えています。この支援金は皆さまのご寄付がよりどころです。今年度の高校生は20名、そのうち3年生は4名です。これからも毎年複数の卒園生が巣立ちます。引き続き皆様のご協力をいただければ幸いです。

8年前に発表された「新しい社会的養育ヴィジョン」に基づき、児童養護の世界の変革が進んでいます。昨年度末には宮城県や仙台市も「社会的養育推進計画」の後期5年間の見通しをそれぞれ発表しました。県も市も子どもたちの数は減っていきながら、社会的養護が必要な子どもの数は減少しないという予測が提示されています。「ヴィジョン」に従い、施設養育は家庭的養育を推進する流れが年ごとに加速しています。仙台天使園も、各ユニットやグループホームでの日々の養育の営みを、家庭的でますます豊かなものにする努力を継続しながら、創立100周年に向けての歩みを進めてまいります。これまでのご支援、ご協力を感謝するとともに、これからの仙台天使園も温かく見守り支えていただけるようにお願いいたします。
2025年(令和7年)6月
園長 土倉 相